名古屋高等裁判所金沢支部 昭和28年(う)7号 判決
記録を検討するに、原判決は、挙示の証拠を綜合し、「被告人は昭和二十七年六月三十日施行せられた富山県東礪波郡庄川町議会議員選挙に際し、同月二十日立候補の上当選したるものなるところ、同日竹村俊夫、小西有三、斎藤平治等と相謀り、右肩書居町の部落常会に名を藉り、部落内に於て被告人のために投票取纏方等尽力を請い得る見込ある有志者を被告人方居宅に招待し、酒食の饗応を為さんことを企て、其の夜右招きに応じ被告人方に参集した該選挙の選挙人斎藤平治、小西有三、竹村俊夫、前野席勝、道淵清、富樫利三郎、小西正輝、大伴為蔵、吉田他八郎、三宅磯四、小西義栄、大浦甚作、斎藤栄三、藤井敏明、沖田勇吉、川島吉太郎等を会同し其の席上来会者中より右被告人の立候補に関する報告並に其の当選に尽力せられ度旨の挨拶ありたるに引続き、被告人より是非当選し得る様皆様の御力添を願い度き旨挨拶依頼を為したる上、叙上参集者に対し予め準備しありたる酒肴合計金二千六百九十五円相当品を提供し、以て自己に当選を得る目的をもつてこれを饗応接待したるものである。」旨事実を認定し、該事実に公職選挙法第二百二十一条第一項第一号刑法第二十五条等を適用し、被告人に対し、懲役参月、四年間執行猶予の判決を言渡したものであることが明白である。これによれば、原審は、「被告人は、町議会議員選挙に際し、自己に当選を得る目的をもつて、竹村俊夫、小西有三、斎藤平治と共謀の上、原判示の日、被告人方に参集した右三名を包含する十六名の者に対し、合計金二千六百九十五円相当の酒食を供与したものである。」旨、事実を認定したものと解するの外なく、従つて、原審は供与者である竹村、小西、斎藤の三名を、同時にまた収受者でもあると認定していることに帰着するのである。思うに、供与の共同正犯者間に於て、供与行為の目的物件につき、供与、収受の二面関係が同時に成立する余地のないことは、まことに明白である。そうして見れば、右三名に対する関係に於て、供与、収受の二行為競合を認容している原判決は明かに矛盾した事実関係の成立を是認しているものであつて、其の理由に齟齬があると言わざるを得ず、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないものである。